応用生物学部とあしたが変わるトリセツショー

昨日(2023年12月7日)のNHKあしたが変わるトリセツショーでは、「甘い!ウマイ!止まらない!キャベツ無限活用技SP」という題で、いくつも応用生物学部での学びと関係のあることが紹介されていました。

キャベツの光合成

キャベツは植物で、畑で育っているときは水と二酸化炭素から糖をつくる光合成を行っています。今地球温暖化の問題を考える上で、植物の光合成をいかに高め、活用するかがとても大事です。植物が大きくなるには二酸化炭素が必要なので、大きくなった分だけ二酸化炭素が固定化されています。食べられないけれどもどこでも育つ植物があれば、それを育てるだけ二酸化炭素を減らすことができます。
植物が光合成で糖をつくれば、それはエネルギーとして使うことができます。糖からエタノールをつくれば車の燃料になるし、油がとれればバイオディーゼルとなります。生物がどういう物質を利用しているのか、どうやってそれらをつくっているのかなどは生物化学という科目で扱っています。また光合成のしくみは植物細胞工学という科目で講義されています。

メタボローム解析

番組ではキャベツを塩ゆですると甘みが増すと紹介されていました。糖などがどう増えるのかと思ってみていると、水が抜けて糖濃度が上がるという説明でした。そのとき、成分を調べる方法としてでてきたのがメタボローム解析です。これは質量分析装置(MASS)を使って一度に多くの種類の化合物を測定するものです。
私が担当する食品化学基礎実験ではハチミツ中の還元糖(ブドウ糖と果糖)、ダイコン中のビタミンCの定量を行っています。一般に、生物の中にある物質の量を測定しようとすると抽出・精製という手順が必要になります。測定対象のものだけを抽出し、何段階かの手順でそれを精製(きれいに)してから測定します。そうしないと不純物が測定のじゃまをしてしまうからです。精製を行うほど、測定結果は信頼できるようになりますが、その過程でどうしても目的の物質も減ってしまいます。逆に抽出・精製しないと、いろいろなものが測定できる代わりに、それぞれは正しく測定できなくなります。
メタボロームの研究者はこのバランスをいかにとるかを工夫し、一度に多数の物質をより正確に測定できるように日々研究をしています。学部の授業では分析化学、食品分析学、機器分析化学で、化学的にはかる(量る・測る)方法などを教えています。

メイラード反応

番組ではキャベツを炒めて、それを煮ることでだしがとれることを紹介し、それをキャベつゆと呼んでいました。薄い緑のキャベツが炒めるときつね色になるのはメイラード反応が起きるからです。
メイラード反応は食品中の糖とアミノ酸が加熱によって反応し、褐色物質に変わる反応のことをいいます。その反応過程や生成する物質についてはよくわかっていないところもありますが、食品化学という科目で教えています。食品化学では食品のもっとも主要な成分である水から、糖・タンパク質・脂質といったエネルギーの素、ビタミンなどの機能性物質などについて学びます。
応用生物学部って、家庭科の延長にもあると思います。

塚谷裕一先生

番組ではキャベツの形(葉が丸まって密になっている形)が進化に行き詰っているとの説明があり、それを話していたのが、塚谷先生です。私も何度かお話させていただいたことがあります。
塚谷先生は一般向けの書籍も多数書いておられ、その博識や仕事の量には「すごいなぁ」という思いばかりです。三浦しをん氏が「愛なき世界」の参考にしたのが塚谷先生の研究室です。主人公の指導教授(松田教授)の描写は塚谷先生とはだいぶ違いますが。

森光康次郎先生

番組でキャベツがまずくなるしくみ(イソチオシアネートの生成)を話していたのが森光先生です。森光先生は私の学生時代の友人の林君の指導教授でした(当時は助教だったと思う)。林君は就職後もたびたび古巣の研究室に来ており、お茶の水女子大に移動した森光先生の研究室で結婚相手を見つけました。
大学にはいろんな出会いがあります。